倉庫の歴史
倉庫の機能・役割
古代より変わることのない、倉庫の機能。物を保管し、必要な物を必要な時期に出荷すること。現代ではそれに加え、物の流れ「物流」、取引の流れ「商流」、情報の流れ「情報流」に対する重要性も高まっています。さらに、今の消費者の志向に合った多品種・少量生産に対応した保管管理や、オンラインショップなど店舗を持たない販売形態のような少量を頻繁かつ迅速に出入庫できる体制など、倉庫に対するニーズは変化しています。JIT(Just in Time)、多アイテム、多頻度小口化、リードタイム短縮など、企業の物流戦略を支える上で、倉庫は大きな要となっているのです。
倉庫の歴史
古代の倉庫
人は有史以前より、食糧や手に入れたものを保管するため、倉庫を利用してきました。エジプトの古都ルクソールには、ラムセス二世が建てた3,500年前の倉庫群を今も見ることができます。日本では倉庫を「蔵」と呼んで富の象徴とし、稲作が大陸より伝来した弥生時代には、高床式倉庫が登場しました。奈良時代に建てられた東大寺正倉院には、書物や宝物など多彩な物が所蔵され、1,300年の時を超えて当時の文化や交易の様子を伝えてくれます。このことから、当時から穀物を貯蔵する倉庫としてだけでなく、記録情報を次代に遺す役割を担っていたことがわかります。
近世の倉庫
四方を海に囲まれた日本では、江戸時代になると造船技術の向上と海路の確保により、海上交通が発達しました。商船を所有していた商人たちは、流通事業が拡大するにつれて、大量の商品を貯蔵するために倉庫を建てました。また蔵屋敷制度が設けられ、諸藩が各領内で納められた年貢米や物品を売りさばくための貯蔵機関・販売機関として、倉庫制度が整えられました。これによって蔵米の買い取りに際し、米切手が交付されることになったのです。これが現在の倉庫証券制のルーツであると考えられています。
現代倉庫業のはじまり
倉庫業が独立した事業として発達したのは、明治10年以降だといわれています。明治期になり、廃藩置県や物納の廃止によって、米を中心とした国や藩による貨物の扱いは大きく変わりました。民間商人が、大量の貨物を扱うようになったのです。これに伴って、蔵屋敷などの倉庫が民間に渡って活用されるようになり、現代の倉庫業の原型が生まれました。明治20年に創業した有限責任東京倉庫会社(現在の三菱倉庫株式会社)は、三菱為替商店の倉庫業務を継承し独立させた会社で、日本の倉庫業のはじまりとされています。